知っておきたい 住宅性能の用語 基礎知識(1)~長期優良住宅、ZEH~

国単位で省エネルギーへの意識が高まる中、省エネルギー性能の評価基準が改正され、2020年にすべての新築住宅を対象に新基準への適合が義務化。それ以降は、この基準を満たしていない住宅は省エネ基準不適合の住宅となりました。
さらに国は2030年に新築住宅を平均してZEHにすることを目標として掲げており、今後の家づくりにおいては、高性能であることが必須となります。
けれど、「住宅性能」といっても、わかりにくいですよね。ここでは、よく出てくる関連用語の基礎知識を3回に分けてお伝えします。
長期優良住宅
良質な住宅をつくり、長期にわたって大切に使うという「ストック活用型」の社会への転換を目的として、必要な措置が講じられた優良な住宅のことを指します。
2009年6月に施行された「長期優良住宅普及促進法」に基づいています。
国土交通省が定めた認定基準を満たす住宅の計画(建築・維持保全)を自治体が認定し、認定された住宅は税制や補助金などの優遇が受けられます。
認定基準の要点は「長持ちする丈夫な家」であることです。
- 次世代に安心してバトンタッチできるだけの耐久性
- 地震大国に求められる耐震性
- 簡単にメンテナンスができる維持管理・更新の容易性
- 省エネ性
これらの条件をクリアすることが基準となります。日本でも欧米のように住宅を資産として評価する準備が整い始めており、長期優良住宅はリバースモーゲージローン(*)が利用できるなど、資産価値の高い住宅として、今や標準的な住宅となっています。
*毎月の生活費を銀行から受け取り、住宅で精算する金融商品
長期優良住宅のメリットは?
- ランニングコストの削減
- 住宅ローン減税の優遇(一般住宅より最大控除額が拡大)
- 登録免許税、不動産取得税、固定資産税、贈与税の優遇
- フラット35Sの適応による金利引下げ
- 住宅履歴情報の作成
長期優良住宅の認定を受けるには、認定基準を満たした住宅を計画し、所管の行政庁から認定を受ける必要があります。また申請費用が必要です。
認定申請に先立って、技術的審査を登録住宅性能評価機関に依頼することが可能です(要費用)。
長期優良住宅 認定基準9項目
劣化対策
数世代にわたり構造躯体が使用できること(少なくとも100年程度)。
劣化対策等級3。
耐震性
耐震等級2以上であること。躯体の倒壊はもちろん、変形を一定以下に抑制する措置を講じること。
維持管理・更新の容易性
内装・設備について、清掃・点検・補修・更新を容易にするために必要な措置が講じられていること。維持管理対策等級3。
可変性
居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。
バリアフリー性
将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。
省エネルギー性
構造躯体において冷暖房に使用するエネルギーを減らすために必要な断熱性能を確保していること。省エネルギー対策等級4。
居住環境
周辺の景観をそこなうことなく、良好な景観を形成し、地域における居住環境の維持・向上に配慮していること。
住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な規模を備えていること。一戸建では床面積75㎡以上、1階の床面積40㎡以上確保していること。
維持保全計画
少なくとも10年ごとの定期点検・補修などの計画が建築時から策定されていること。その結果を記した「住宅履歴書」を作成すること。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

ZEHとは、ゼッチと読み、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称です。
住宅を高気密・高断熱化し、省エネ性能の高い設備を導入することなどにより、一般的な住宅と比べて20%以上消費エネルギーを減らす。そして太陽光発電などによって「エネルギー消費を上回るエネルギー」を自宅で創り出し(創エネ)、年間の消費エネルギー(*)がプラスマイナスゼロまたはゼロ以下となる住宅のことです。
*詳しくは、一次消費エネルギー量といい、空調・給湯・照明・換気のエネルギー消費量の合計を指します
冒頭に記したとおり、国はこのZEHの普及を進めており、エネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」では、2020年までに標準的な新築住宅をZEHとし、さらに10年後の2030年までには新築住宅を平均してZEHにすることを目標として掲げ、普及に向けた取り組みが進められています。
まずは少し知っておこう「ZEHの要件」
経済産業省資源エネルギー庁が推進するZEH支援事業では、ZEHの基準を次の3点で定めています。
- 外皮性能
- 一次エネルギー消費量の削減率
- 太陽光発電システム等の再生可能エネルギーシステムの導入
外皮性能は、地域ごとに設定されたUA値の基準値をクリアすることが求められます(岡山県はUA値0.6W/㎡・K相当以下)。
一次エネルギー消費量の削減率は、平成25年基準の標準的な住宅に比べて、再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量が20%以上削減され、かつ再生可能エネルギーの発電量を含んだ状態で一次エネルギー消費量が100%以上削減されていることが求められます。
【ワンポイント】省エネ型設備の導入が必要

「ZEH基準」で求められる「20%省エネ」の対象は、空調・給湯・換気・照明設備となります。つまりZEH住宅の建築には、高効率な照明や給湯設備、空調、換気設備といった「省エネ型設備」の導入が必要です。
【イラストで見るZEHの仕組み】

ZEHを建てるメリットは?
エネルギー消費量抑制とそれによる光熱費削減のほかにも、次のようなメリットがあります。
健康面
高断熱化により一年を通して一定の室温を保つ住まいになるため、健康的な暮らしにつながります。
住まいの中で、暖かな場所から寒い場所に移動した際、体が急激な温度変化を受けることを「ヒートショック」といいます。これによる血圧変動で、高齢者の方などは脳出血や脳梗塞、心臓麻痺などを起こすおそれがあります。住まいが一年じゅう快適な室温であれば、このヒートショックの危険性をなくすことができます。
災害時の自立
太陽光発電などを導入するZEH住宅は、災害時にエネルギーを自給自足でき、生活への影響を抑えることができます。
建築費用はかかるけれど、長期的にみればプラス面が多い
光熱費の抑制で毎月のランニングコストが削減されるほか、税制優遇、健康・防災面での利点など、トータルで長期的にみれば、プラス面が多いといえます。